消防団は必要か?必要なんです!あなたの命を救うのは消防士ではなく、消防団員・・かも?

○消防団は不要!?

私は、団歴20数年の消防団員です。
わが町は、過疎が進む田舎町。
消防団への加入は、任意ですが、断る事はできません。

なぜなら、消防団には、定員が定められています。
新しく団員が入らないと、古い団員が辞められません。
団員は、皆ご近所の知り合い・・・断れるはずが有りません(涙)

そんな半強制で入団した消防団。
たまに、消防団は不要とのメディア・ネットの情報を目にすると悲しくなります。

不要の理由は、以下の4点でしょうか?
①消防署が有るから、不要。
②消防団員は、何もしていない。
③税金の無駄。
④羽目を外した宴会が目に余る。

○検証
それでは、①~④を検証してみます。

①消防署が有るから、不要。

これは、私の町では、完全に当てはまりません。
町にある消防署の消防車は、4台です。
火災が発生した時には、足りません。

地元で直近に起こった火事は、ホース9本で水をかけましたが、鎮火に2時間程度必要でした。
9本のうち、消防署のホースは、2本。
残り7本は、消防団でした。

詳しくはこちらの記事をご覧下さい→2軒隣が火事! 消防団出動

更に、消防署が到着する前に、消防団のポンプ車4台が現地に到着していました。
消防署が到着したのは、最初に到着した消防団から10分後。

②消防団員は、何もしていない。

実は消防団員は、救急・レスキューを除くと、消防士より出動回数は多い位です。
わが団の出動の内容は、火事・台風の見回り・行方不明者捜索です。

もちろん火事は、消防士も出動してくれます。
消防団も当然出動していますが、テレビの火災のニュースでは、ほとんど映りません。

ニュースの映像は、鎮火(火が見えなくなった)後の映像や、現場検証の映像です。
消防団の仕事は、鎮火すると、一旦終了なので、ニュースに登場する機会は少ないのです。

消防士は、鎮火の後に現場検証を終えると、帰ってしまいます。
しかし現場からは、まだ煙が出ている事も多く、最後の消火は、消防団が行います。
その後は、再出火を防ぐために、消防団員が監視を続けます。
監視は、場合によって、徹夜で行うこともあります。

台風襲来時は、気象警報が出ると、消防団に出動命令が下ります。
地域を巡回して、倒木の処理、がけ崩れの応急処置を行います。
河川水位も見張り、土嚢を積むことも・・・

しかし消防署は、台風時にわき道などの細かいケアは、してくれません。
台風被害は、対象範囲が広域になるため、地域の隅々までは、手が回らないのです。

行方不明者の捜索において山岳遭難の場合は、消防士も出動してくれますが、近所の老人・子供がいなくなった時は、消防団のみで捜索を行います。

③税金の無駄。

私達団員は、特別地方公務員となり、自治体から報酬を頂けます。

自治体により違いますが、わが町の年間報酬は、まず消防団に対して10万円。
個人には、平団員2万円。
班長4万円。
部長6万円。
副分団長8万円。
分団長10万円。
と、決まっています。

その他に、出動1回につき1,000円。
これは、時間に関係なく、1回1,000円です。
退団時には、退職金(勤続30年で約50万円)が、支給されます。

報酬の対価にどれだけ働くかと言うと、1年間で、
機械、防火水利の点検 1時間×12回=12時間。
出初め式など式典 6時間。
非常訓練など訓練 6時間。
火災など出動 16時間。
年末夜警 8時間。
会議等 8時間。
合計56時間です。
30年で1,680時間。

個人報酬は、班長以上を2年ずつ勤めると30年で、150万円です。
時給にすると、893円。
後に記載した苦労に対して、低すぎです。

全国の消防団員は、859,995人。
年間報酬合計は42,999,750,000(429億円)です。

一方、消防士の平均年収は、718万円。
(以下、各数字のソースは、記事最下に記載)
429億円では、消防士を5,989人しか雇えません。
そう考えると安い物です。

④羽目を外した宴会が目に余る。

これは・・・おっしゃるとおり(笑)
消防団員は、地元の社長が多いので、つい派手になってしまいます。
一点弁解させてもらうと、わが消防団では、頂いた個人報酬を全額消防団に寄付して宴会代にしています。
それでも足りない分は、もちろん自己負担。

だから、わが町の消防団員の手元に残るのは、退職金だけ(涙)

○消防団活動は、辛い。

消防士は、交代で非番があります。
しかし消防団員は、24時間、365日臨戦態勢。

招集が掛かれば、いつなんどきでも駆けつけます。
平日の夜中、2時や3時に火災出動したことも何度かあります。
夜が明けると、疲れきった状態で職場へ出勤。

台風の時に招集がかかれば、警報解除まで、屯所(消防団の基地)に待機し、巡回を続けます。
夜間であれば、徹夜です。
今までの最長では、2日間屯所に待機した事もあります。

冬の火事は、悲惨。
わが町は高地にあり、非常に寒いです。

火事の現場では、燃えた家を挟んだ放水の水がかかり、全身びしょ濡れ。
鎮火する頃には、道路に流れた水が凍ります。
そんな気温の中で、濡れながらの消火は、本当に辛いです(涙)

出初め式は、1月に屋外で整列。
わが町は、地元の出初め式のあと、近隣の市町村との連合出初め式があり、3時間立ちっぱなしです。

雪の日は、団員の肩や背中に雪が積もっていきます。
1時間で、足の感覚が無くなり、その後の2時間は、苦行です(号泣)
(記事は下に続きます。)

○理解されない

こんな辛い思いをしていても、酷いことも有りました。
それは、とある日曜日。
遭難の知らせが入り、出動です。

遭難した山は、標高900m。
消防団員が半日歩き、足を捻挫した女性を発見しました。
彼女の靴は、真っ赤なローヒール。
ドライブの途中で思い立ち、ハイキング感覚で登ったそうです(怒)

彼女を担架に乗せて、下山している道中の事。
捜索に数時間かけて、下山は女性を乗せた担架を持ってもうヘトヘト・・・
疲れきった状態で、座って休憩した時に、担架の女性が「あなた達、公務員なんだから、もっとしっかりしなさい!」
消防団員を消防士と、勘違いしています。

団員の一人が、声を荒げて、女性に詰め寄ったので、慌ててとめました。
その日彼は、家族で遊園地に行く予定でしたが、予定を延期して捜索に参加してくれた、責任感が強い若者でした。

○消防団員は、今までもこれからも必要!

消防団員がどれほど日本の防災を担っているかは、この数字を見れば理解してもらえるのではないでしょうか?


ポンプ車の台数は、2.17倍。
人数は、消防士の5.3倍です。

「私は、都会に住んでいるから、消防署だけで大丈夫」と考えている人もいるかもしれませんが、下表のように、東京都でさえ消防団の方が多いのです。


ポンプ台数は、1.13倍。
人数は、消防士の1.27倍です。

全国では、火事現場のポンプ車3台に2台が、東京でも2台に1台は、消防団のポンプ車です。

○もしかして、あなたを助けてくれるのは・・・

隣家が火事になり、あなたの家も燃えるのを覚悟した時、ずぶ濡れになりながら、あなたの家に水をかけて守ってくれた。
地震で瓦礫の下敷きになり、希望を失いかけた時、手を握りしめ、助け出してくれた。

そのヒーローは、「がり股・下品な会話・飲む・打つ・買う」の最低な人間。
背中に地元の地名を刺繍した「はっぴ」を粋に着た・・・消防団員。
そんな可能性は、消防士に助けられるよりずっと高いのです。

消防団員は、「はっぴ」と共に、義務感・責任感・地元への愛も着ているのです。
消防士のような立派な装備も無く、ヘルメット・はっぴ・長靴・・・笑えるほど品疎な装備で、次の現場へ向かうのです。

○最後に・・・

ここまで、消防団の必要性を書いて来ましたが、「小金餅君、消防団を退団してもいいよ」と言われれば、即座に退団します(爆)

田舎では、消防団員になりたくて、団員を勤めている人は、いません。
私も、仕方なしです(涙)

この記事内の数字は、以下のサイトから引用させていただきました。
  • 「平均年収.jp」
  • 東京消防庁
  • 総務省消防庁
  • 東京消防庁
  • 総務省消防庁
  • 東京消防庁


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1 件のコメント :

  1. 自分も消防団です。あなたのように頑張ってる人はいるんだと思いますが、その地域に住んてるだけという理由だけで半強制的に加入させられて、少ない報酬で地域に尽くさせるのは間違っていると思うし、なり手がいなくなるのは当然だと思っています。現実問題として、今は中山間地域でも日中は会社勤めだったり、町の中心に住んでいる人の方が多かったりして、火災の現場に駆けつけること自体が難しいです。消火活動や災害時の救助活動なども現実的に何ができるのかわかりません。まともな訓練を受けない消防団はそういう活動の受け皿ではないと思います。消防団の昭和の価値観や古臭い因習がなくなればいいなと思っています。

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